A Thousand Suns (2010/09/15) Linkin Park ★★★★★ Amazonで詳細を見る |
アメリカのロックバンド Linkin Park、4枚目のオリジナルアルバムで、アメリカレコード協会からゴールドディスク認定(50万枚)された。【RIAA】
ダークかつ重厚なテーマをもつコンセプチュアルな作品。戦争・原爆、それらを否定する意味での原始への回帰、救われない現代の人間の悲哀を歌い、最後には全てを捨てて逃避することを伝える。
A Thousand Suns
1. The Requiem
【YouTube】 【歌詞和訳】陰鬱に始まるオープニング。透明感のある少女の声が人類の罪業をささやき、カウントダウンで次曲に接続する。
2. The Radiance
【YouTube】 【歌詞和訳】世界で初めて行われた原爆実験「トリニティ実験」についてのアメリカ原爆開発責任者オッペンハイマーによるスピーチ。
前曲ラストのカウントダウンから、オッペンハイマーによる言葉へ続く。
3. Burning In The Skies (3rd single)
★★★★☆【Music Video】 【歌詞和訳】
4. Empty Spaces
【YouTube】インタールード。
虫の鳴き声が響く夏の夜の風景に、大砲の轟音が鳴り響き群集の喧騒が聞こえる。夏の夜の戦争風景を想起させる。
ここでも、人類の負の面が参照されている。
5. When They Come For Me
★★★★★【YouTube】 【歌詞和訳】
歌詞からは、救われない現代の人々の心境が語られているように思え、また原始的なものへの回帰を切望する一節が見られる。しかし同時に、それがすでに不可能であり、原始の精神は失われていることもまた伝えているように感じられる。
6. Robot Boy
★★★☆☆【YouTube】 【歌詞和訳】
天から若しくは心のある部分からの神託が、孤独なものへ降り注いでいるような心象を呼び起こすサウンド。
その啓示は、人が孤独であることを理解し、犯した罪を許し、そして行動を促しているように思える。
7. Jornada Del Muerto
【YouTube】インタールード。
日本語で「もちあげて、ときはなして」と降り注いでくるようなささやく声が続く。
前曲に続き、何かポジティブな方向へ進むことを促しているような内容。史上唯一原爆を使用された国の言葉が使われていることに何か意味があるのか・・・。
8. Waiting For The End (2nd single)
★★★★★【Music Video】 【歌詞和訳】
ラップとメロディの掛け合いという Linkin Park の秀逸な部分を、完成された形で聞くことが出来る名曲。天を仰いでいるかのような、広がりのあるチェスターの声は神々しささえ感じさせる。
歌詞は詩的で、現実の苦悩や受動的で大きな流れに抗うことができない人生と共に、人間の望みや、自らきっかけをつくり動き始める人間の存在が語られている。
9. Blackout
★★★☆☆【YouTube】 【歌詞和訳】
電子的な音を多用し、ラップとシャウトが交互に続くが、後半に曲調が変化する。前半部は、軽い調子の電子的サウンドに激しいシャウトが不自然な印象さえ感じさせる。
歌詞はある背信者について語り、背信者強く批判する内容。しかし後半で一転し、幻惑的な情景を表現する歌詞へと変化する。
10. Wretches And Kings
★★★★☆【YouTube】 【歌詞和訳】
バークレー校の反体制運動家マリオ・サヴィオの演説で始まり、終わる、スナップの効いたラップ中心の曲。
歌詞もマリオ・サヴィオの演説に関係しているように思え、支配層への従属の描写が見られ、また反目や闘争を想起させる。
11. Wisdom, Justice, And Love
【YouTube】 【歌詞和訳】スピーチ。キング牧師によるベトナム戦争時の演説。
ベトナム戦争の反対を強く訴えたスピーチ。
12. Iridescent (4th single)
★★★★☆【Music Video】 【歌詞和訳】
悲哀や苦悩、諦念さえも感じさせるチェスターの歌声で始まり、振り絞るかのような声に駆動されて曲は高みへと昇っていく。
歌詞もまた人間の悲しさや孤独、絶望感を綴る。
13. Fallout
【YouTube】 【歌詞和訳】インタールード。天から響いてくるかのような声が『Burning In The Skies』の歌詞を参照する。
14. The Catalyst (1st single)
★★★★★【Music Video】 【歌詞和訳】
極めて実験的な楽曲で、叫びつづけるチェスターの声が辿るメロディは、エッジとスナップだけで構成されているかのように聞こえる。バックグラウンドで鳴る音は、聞いたことのない音で聞いたことのないフレーズを繰り返す。
神を称えるフレーズで始まる歌詞は、『The Requiem』の歌詞を綴っていく。
15. The Messenger
★★★★☆【YouTube】 【歌詞和訳】
感情豊かに歌い上げるチェスターの声は、懐かしさを感じさせ、牧歌的でさえあるが、深く心に染みわたる。
歌詞は人間の孤独や諦め、そしてそのような生存というものからの開放、生きることへの労いを綴っているように感じられる。
考察
本作のタイトルとなった言葉「A Thousand Suns」は、ヒンドゥーの叙事詩マハーバーラタの『バガヴァッド・ギーター』の中で現れ、世界を終焉させる現象として記述されている。訳:If the radiance of a thousand suns were to burst into the sky,That would be like the splendor of the Mighty One—I am become Death, the shatterer of Worlds.【ウィキペディア:トリニティ実験】
千の日による発光が宙を焼き尽くすとき
最も強い輝めきのようなものであるだろう
我は死となり、世界を粉砕するものとなる
また、先行して発表された『The Catalyst』及びオープニング曲『The Requiem』の中では、聖書の黙示録の一節のような歌詞に「A Thousand Suns」という言葉が使われる。
God save us everyone訳:
When we burn inside the fires of a thousand suns
For the sins of our hand, the sins of our tongue
The sins of our father, the sins of our young
神よ我等を救いたまえ
我々は千の日輪の中で焼かれるのだろうか
有する罪悪のために、話す言葉のために、
先人の罪業のために、若かりし日の罪のために…
そして、本作における原子爆弾への言及を考慮すると、欧米のキリスト教文明に罪業を置いた終末論的思想が本作のタイトル「A Thousand Suns」に表されているのかもしれない。
感想
「オルタナティブの地平」、ツタヤではこのように紹介されていましたが、極めて的確かつセンスのある言い回しだなと思いました。この作品は、リンキンパークの前3作とはかなり趣が異なり、ファンの期待を裏切るようなものだったみたいですが、私はここ何年かの最高の作品になりました。
インストゥルメンタルやスピーチなどが挿まれ、実質的には9曲しかありませんが、叙情的な曲や実験的な曲、壮大な曲や神々しささえ感じる曲など心動かされるものばかりです。ただし、全編に渡ってダークですけれども。
関連情報
アルバム名 | A Thousand Suns |
アーティスト名 | Linkin Park |
発表 | 2010/09/15 |
評価 | ★★★★★ |
メンバー | Chester Bennington, Mike Shinoda, Brad Delson, Dave Farrell, Rob Bourdon, Joe Hahn |
プロデューサー | Rick Rubin, Mike Shinoda |
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