One More Light (2017/05/19) Linkin Park ★★★★☆ Amazonで詳細を見る |
アメリカのロックバンド Linkin Park の7枚目のスタジオアルバム。
ラウドな表現が完全になくなったポップミュージックアルバム。R&B1曲、ヒップホップ1曲、エレクトロロック1曲、ポップ1曲、バラード5曲、そしてフォークが1曲という構成で、現在のポップミュージックシーンに寄せたサウンドであり、ダブの要素を多分に含んだサウンドになっている。
アルバム全体を通して、メンバーのパーソナルな部分を表現した歌詞が多く、マイクの息子に向けた『Invisible』と『Sorry for Now』、チェスターとそのパートナーの関係について書かれた『Talking to Myself』、チェスターの青年期についての『Halfway Right』、亡くなったメンバーの友人への思いを描写した『One More Light』のように半分を占めている。その内容は極めてセンチメンタル、もしくはもの哀しく、その歌詞に引きずられるように、サウンドもまた哀愁を漂わせている。
One More Light
1. Nobody Can Save Me
★★★☆☆【YouTube】 【歌詞和訳】
ゆったりとしたダブ/レゲエミュージックにバラードを乗せた楽曲。
歌詞は、制御できない自分自身の心を語り、またそれは精神に触れられる自身によってしか解決できないと述べているように思える。
2. Good Goodbye (feat. Pusha T and Stormzy) (3rd single)
広漠とした空間的広がりのあるサウンドに、チェスターの歌唱を挟んでマイク・シノダ、Pusha T、Stormzyの順でラップが挿し込まれる。愁いを帯びた調子で伸びやかに歌うチェスターのメロディは心地良く、クールで理知的という共通点を持ちながらも、そのカラーを次々と変えていくラップは極めて聴き応えがある。
歌詞は、釣り合わない、相応しくない人間に、その場所や地位を退くよう促す、または追い立てることを主題としているように感じられる。
3. Talking to Myself (4th single)
エレクトロ色の強い、スタンダードなロックミュージック。
歌詞は、チェスターのパートナーであるタリンダ(Talinda)からチェスターへ向けたものとして描写されているとのこと。【Genius Lyrics: Linkin Park – Talking to Myself Lyrics】
そして、酷い精神状態の親しい人を好転させようとするもままならない、そのような様子が描かれている。
4. Battle Symphony (2nd single)
サイケデリックなサウンドのゆったりとしたバラード。
歌詞は、人が何かに立ち向かったときに、頭の中で鳴り響く自身を鼓舞する音楽、そして思い浮かぶ情景を表現しているようにみえる。
5. Invisible (4th single)
マイク・シノダによって歌われる、穏やかで素朴なバラード。
歌詞には、マイク・シノダが親として子へ伝えたい事が綴られているという。【Billboard: Linkin Park Share Supportive New Single 'Invisible'】
6. Heavy (feat. Kiiara) (1st single)
R&B。
語りかけるように叙情深く響くチェスターの歌声と、弾くように沿うように歌うキアラのパートが移り変わり、サウンドは声色に込められた感情と共に静と動に揺れ動く。
歌詞は、誰もが普遍的に持ち、澱のように溜まっていく、どうにもならない記憶について述べているようにみえる。
7. Sorry for Now
歌唱をマイク・シノダが、ラップをチェスター・ベニントンが歌う王道的ポップミュージック。
また、振り下ろされるようなベース音で始まり、天使の鳴き声のようなサウンドが鳴り響く間奏は、極めて興味深いサウンドで圧倒的な存在感を放つ。
歌詞には、マイク・シノダの自身の子への思いが綴られており、寂しい思いをさせていることへの謝罪の気持ちなどが綴られている。【Genius Lyrics: Linkin Park - Sorry for Now Lyrics】
8. Halfway Right
歌唱、サウンド共にセンチメンタルなポップバラード。
チェスターの歌声は、飾り気なく青臭ささえ感じさせる。それゆえに、ロックスターとしてのチェスターではない、一人の人間としての人柄が伝わってくる。
歌詞には、チェスターの問題があった青年期について描かれているという。【Genius Lyrics: Linkin Park - Halfway Right Lyrics】
9. One More Light (5th single)
悲しみや寂しさを湛えたアコースティックなバラード。
歌詞には、メンバーの友人が亡くなったときのことが描かれているという。【Genius Lyrics: Linkin Park - One More Light Lyrics】
10. Sharp Edges
もの哀しさを漂わせた、アコースティックなフォーク/カントリーミュージック。
歌詞には、人を成長させる瀬戸際の状況と、そのときに為すべきことが描かれている。【LP Association Forums: Linkin Park Interview in Upset Magazine】
感想
相変わらずサウンドクリエイトは秀逸で、『Sorry for Now』の間奏にいたってはダブステップの要素を含むものの極めてアバンギャルドだった。『Invisible』や『Sorry for Now』でのマイク・シノダの声も円熟味があり、包まれるような父性をも感じられた。
ラウドな表現が完全になくなったチェスターの歌声は、素朴で感傷的でありながら心の底から引き絞るような印象を感じられ、ロックスターとしてのチェスターではなく、一人の人間としてチェスターを浮き彫りにするようであった。
そういった Linkin Park にとっての初めての試みを多分に含んだアルバムとなっているのだと思う。
しかし、本作には Linkin Park らしさがやはりなくなってしまったように思う。それは、ラウドさでもなく、チェスターのシャウトでもなく、何かクラシックに通底するような壮大さが欠けているように感じられる。歌詞が個人的であるために、サウンドも小さく収まってしまった、そんな印象さえ受けてしまった。
関連情報
アルバム名 | One More Light |
アーティスト名 | Linkin Park |
発表 | 2017/05/19 |
評価 | ★★★★☆ |
メンバー | Chester Bennington, Mike Shinoda, Brad Delson, Dave Farrell, Rob Bourdon, Joe Hahn |
プロデューサー | Brad Delson, Mike Shinoda |
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